2011年12月18日

修二 -1-


僕は修二

ピカピカの中学一年生

と、明るく言いたいところだけれど気持ちは

とってもブルー。


だって、ちょっと前までは最上級生で、別に

威張りたいわけじゃないから、それはどうで

もいいんだけれど。


 今では、上級生を見たら挨拶をしなきゃい

けない。


 まあ、それも良い事だとは思うけど。

 勉強や部活で頑張っている先輩なら、心の

底から挨拶する気持ちにもなるけど、どう見

たって尊敬できない先輩がいる。


 そんな先輩に限って、挨拶をしろ、とかう

るさく言ってくるんだ。


 そして英語。


 興味はあるし、大事な勉強だと思うけど、

会話する勉強だからね。日本語の会話だって、

苦手なのに、更に、知らない言葉でしゃべる

なんて無理。


 それでも、大切だと思うから、予習とかも

ちゃんとやってたんだ。


 今日、二人で交互に教科書の会話文を読む

授業があってさ。


 バッチリ予習して自信があったから手を挙

げたんだ。そしたら、僕がみごと山崎先生に

指されたまでは良かったんだけど、もう一人

の会話の相手がクラスで一番可愛い相沢さん

だったんだ。


 上手に読まなきゃって思った瞬間、頭が真

っ白。


 結局、ひと言もしゃべれずに、終わった。

 次に指された良男が相沢さんとの呼吸もぴ

ったりに完璧に読んじゃったからもう最悪。



「よう、修二」

 最悪な日には、悪いことが続く。

 今、声をかけてきたのが浩平。

 小学校時代からの友達だけど、最近は前の

ようには遊ばなくなった。5年の夏に、両親

が離婚して今はお母さんと二人で暮らしてい

るんだけれど、その頃からあまり学校へ来な

くなった。不良仲間とよく一緒にいるとか、

タバコを吸ってるのを見た、という人もいる。

着ている服もだらしなくて、ちょっと恐い

感じ。

 修二君とは、もう遊ばないようにしなさい

って、お母さんからも言われている。

 けど、元々嫌いな奴じゃなかったし、可哀

想な気もして、声をかけられたら、一緒に遊

んであげるようにしている。でも、ゲームセ

ンターとか不良の集まるところに行くことが

あるから、それは断ろうかどうしようか迷っ

てる、そんな感じ。


「山崎、何か言ってたか?」

 山崎って言うのは、浩平は呼び捨てにして

るけど、僕たちの担任の先生で英語を教えて

いる。

 山崎先生は40才くらいの男の先生。 

 先輩達は、昔はとても恐かったって言って

るけど、本当かな?

 僕にとっては、優しくてとても好きな先生。



「何かって何?」

「俺のことだよ。」

「浩平とは、最近会っているかって聞かれ

た。」

「で、なんて答えたんだ?」

「最近は、あまり会ってないって言ったら、

もし浩平にあったら、ちゃんと学校へ来いっ

て伝えてくれって。」

「本気か?お袋に騒がれてビビッてるくせに

よく言うよ。」



 一週間くらい前、授業中に携帯を見ている

のを山崎先生に注意された浩平が、逆ギレし

て先生にひどいことを言って大騒ぎになった

ことがある。

 ここから先は、浩平に聞いた話だから、ど

こまで本当か分からないけど、山崎先生に呼

び出された浩平のお母さんが

「携帯を持たせているのは私の判断です。授

業中に見たのは悪かったと思いますが、親子

二人の生活で必要なんです。」

 とこちらも逆ギレに近い状態で山崎先生に

くってかかったらしい。

 それで仕方なく携帯を持ってきてもいい、

という事になったと浩平は言っていた。

 相変わらず、浩平は授業中も携帯を見てる

けど、あまり学校に来ないから、先生も言わ

ないようにしてるのかも知れない。



「修二、今日、俺と付き合えよ。ラーメンお

ごってやるからさ。」

 浩平が眉をちょっと上げてしゃべる時は、

あまりいい話じゃない。


「別に、お腹空いてないからいいよ。それに、

英語の宿題もあるし。」

「そうか、俺とは付き合いたくないんだよな。

こんな不良と付き合っちゃ駄目って、お袋か

らも言われてるんだろう。」

 浩平は、僕の弱点を知っている。

 お母さんの事を言われるのは苦手なんだ。

 修二はまだおっぱい飲んでるんだろう、と

か言われると、もう子供じゃないって思って、

結局、相手の罠にはまってしまう。


「修二、後藤先輩って知ってんだろ。俺たち

の4こ上の先輩。その後藤先輩から教えて貰

ったんだけどさ。」

 後藤先輩は、僕たちと同じ小学校の先輩で、

中学校時代は山崎先生が担任をしていた。

 山崎先生は、いつも、小学校で一番の問題

児を担当するって噂があって、だから3年間、

後藤先輩は山崎先生のクラスにいた。

 浩平も、山崎先生のクラスにいることを考

えると、あの噂は本当かも知れない。


「ただでラーメン食えるとこ、知ってるんだ。」

「えっ、そんなとこあるわけないじゃん。」

「それがあるんだ。昨日ただで食った。」

と、眉を更に上げて言う。


 これは、かなりやばい話に違いない。

          − つづく −






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posted by saru at 11:52| Comment(0) | ショートショート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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